目次

  1. 炎上したクレームの中身
  2. クレーム①「ツール定義は40-50%を食う」
  3. クレーム②「MCPはもう終わり」
  4. クレーム③「ツールが多いと精度が崩壊する」
  5. 減らし方は分かっている — 4つの実証済み手段
  6. 日本SaaSへの含意
  7. FAQ

炎上したクレームの中身

2026年3月11日、Ask 2026カンファレンスでPerplexity CTO Denis Yaratsが「社内的にAnthropicのMCPからAPI・CLIへ移行している」と表明した。理由は2つ——(1) MCPツール定義がエージェントが仕事を始める前にコンテキスト窓の40-50%を消費すること(2) 複数サービス接続時の認証フローの摩擦。発言はThreadsとSNSで急速に拡散し、「MCPはもう終わり」「標準が死んだ」というハッシュタグ的な反応が連鎖した。

同じ時期、Merge CTO Gil Feigも独立に「典型的なデプロイ構成ではツールメタデータが利用可能コンテキストの40-50%を占める」と推計を公表。さらに「ある開発者は4 MCPサーバー接続済みでプロンプト入力前に約7,000トークン、ヘビーな構成では66,000トークン(Claude Sonnetの200kコンテキスト窓の約1/3)を会話開始前に消費していた」という実測も観測された。

クレームは3つに整理できる。一つずつ、利用可能な実測値で検証する。

クレーム①「ツール定義は40-50%を食う」

検証結果: ⚠️ 条件付きで本当

マルチサーバー前提の典型構成では正しい。シングルサーバー・キュレーションされた構成では当てはまらない。

実測ベースで何がトークンを食っているのか。複数の独立した報告が、似た数字に収束している。

MCPサーバー / 構成 ツール数 定義トークン 200kコンテキスト比
GitHub 公式MCP94~17,600~8.8%
Atlassian 公式MCP(Jira + Confluence)~10,000~5.0%
大型サーバー複数接続30,000+~15%以上
4サーバー軽量構成(典型例)~7,000~3.5%
ヘビー構成(報告された極端例)~66,000~33%

40-50%という数字は絶対値ではなくレンジとして読むべきだ。大型サーバーを複数接続すれば容易にそこへ届く。GitHub MCPだけで94ツール・17.6kトークン消費するため、AtlassianやSlackと並べれば30k+に達する。一方、KanseiLink MCPのようにcompact: trueモードを提供しているサーバーや、サーバーを1-2個に絞った構成なら数千トークン台に収まる。

読み解き方

「MCPは40-50%食う」は『何でも全部入りで接続するとそうなる』という条件付きの真実だ。プロトコルの本質的な欠陥ではなく、運用設計の問題。同じMCPサーバーでも、サーバー選定とツールキュレーション次第で消費トークンは1桁変わる。

クレーム②「MCPはもう終わり」

検証結果: ❌ 不正確

Perplexity 1社の判断は業界の撤退ではない。むしろ標準は欠点を直しながら広がっている。

「MCPはもう終わり」「標準が死んだ」というSNSの反応は、Perplexity 1社の社内判断を業界全体の傾向に拡大解釈している。事実関係を整理する。

プロトコルが死んでいるのではなく、『何でも全部入りで接続したらコンテキストが破裂する』という運用上の欠点が顕在化し、エコシステム全体でその修正が進んでいる——というのが現在地に近い。

クレーム③「ツールが多いと精度が崩壊する」

検証結果: ✅ 本当(しかも別の問題)

これはコンテキスト窓の問題とは独立した、認知負荷の問題。ツール数が多すぎるとLLMの選択ヒューリスティクス自体が乱れる。

「ツール定義がトークンを食う」とは別の、より深い問題がある。複数の実測で、ツールセットが肥大するとエージェントのツール選択精度が劇的に低下することが観測されている:

ツールメニュー肥大化の認知コスト

43%
小〜中規模ツールセットでのツール選択精度
14%
肥大化ツールセットでの精度(同条件)
3x
劣化倍率 — 8回中7回間違うレベル

つまり、ツール定義を圧縮してトークンだけ減らしても、『そもそも何を呼ぶか』の判断が壊れる。たとえ200kコンテキストの大半が空いていても、メニューが長いと正しいツールが選ばれない。これは「コンテキスト窓のサイズで解ける問題ではない」ことを意味する。

解決の方向性は明確だ: 必要なツールだけを動的にロードする設計に切り替える。MCP公式のSEP-1576はまさにここを扱っている。

減らし方は分かっている — 4つの実証済み手段

「MCPを使うか/捨てるか」の二択ではなく、「どう絞り込んで使うか」が正しい問いだ。実測で効果が確認されている手段は4つある。

2026年5月の編集視点

議論の焦点は「MCP vs API」ではなく、「MCPを賢く使うか・愚直に使うか」に移っている。プロトコルの設計を変えるべき領域(SEP-1576)、ベンダーが提供すべき省トークン機能(compact / 動的ロード)、利用者が選ぶべき構成(キュレーション)——三層で取り組めば、40-50%は数%に縮められる。

日本SaaSへの含意

日本SaaSベンダーがMCPサーバーを設計する際、Perplexity離脱騒動から取り出すべき教訓は明確だ。

「MCP対応」を看板にする前に、『どう接続されたときにエージェントから経済的に見えるか』を測ることが、AEO(Agent Engine Optimization)時代のSaaS提供者の責務になる。

あなたのMCPサーバーは、何トークン食っていますか?

KanseiLinkは225+の日本SaaS MCPサーバーについて、ツール定義トークン数・コンパクトモード対応・成功率・Agent Voiceを可視化します。自社MCPがエージェントの「重い」「軽い」のどちら側にいるかを診断できます。

AEO診断を相談する

FAQ

「MCPツール定義がコンテキストの40-50%を食う」は本当ですか?

⚠️ マルチサーバー前提では本当、シングル/キュレーション構成では当てはまりません。GitHub公式MCPは94ツールで~17,600トークン、Atlassian公式はJira+Confluenceで~10,000、複数大型サーバー接続で30,000+。極端例では66,000トークン(200kコンテキストの~33%)が会話開始前に消費されました。一方、1-2サーバーに絞れば数千トークン台です。

「MCPはもう終わり」「標準が死んだ」は本当ですか?

❌ 不正確です。Perplexity離脱は1社の判断で、業界からの撤退ではありません。MCPは2024年11月のオープンソース化以来、OpenAI・Google DeepMind・Microsoft・Cursor・Atlassian・ServiceNow・Salesforce・Linear・GitHubに採用され、2026年4月にはLinux Foundation傘下AAIFに寄贈されました。MCP公式リポでも SEP-1576 で欠点を直す動きが進行中です。

ツール定義の肥大化はエージェントの性能を落としますか?

✅ 落とします。複数の報告で、ツールセット肥大時にツール選択精度が43%から14%以下に崩壊することが観測されています(3倍の劣化)。これはコンテキスト窓の問題とは独立した認知負荷の問題で、トークン圧縮だけでなく動的ツールロードが必要です。

ツール定義のトークン肥大はどう減らせますか?

4つの実証済み手段があります。(1) Anthropic code mode: 最大98.7%削減。(2) Atlassian mcp-compressor: 70-97%圧縮。(3) サーバーをキュレーション: 必要な1-2サーバーに絞る。(4) コンパクトモード: KanseiLink等の compact: true モードを使う。

結局、企業はMCPをどう使うべきですか?

「使うか/捨てるか」ではなく「どう絞るか」が正しい問いです。(1) 業務に必要なサーバーだけ接続、未使用は外す。(2) 大量ツールサーバーには圧縮 or code modeを評価。(3) ベンダー側はツール絞り込みと動的ロード対応でAEO品質を上げる。Perplexityのように特殊用途で別経路を併用するのは合理的ですが、「MCPが終わった」からではなく「1ユースケースで別経路の方が経済的だった」だけです。

データ開示・出典・免責事項

本記事のクレームと数値は2026年5月18日時点で公開された一次・二次情報に基づきます。主な出典: Perplexity CTO Denis YaratsのAsk 2026(2026-03-11)発言(Threadsおよび複数の報道で確認)、Merge CTO Gil Feigによる「ツールメタデータが40-50%」推計、GitHub公式MCPサーバーの94ツール/~17,600トークン実測、Atlassian公式MCP(Jira+Confluence)~10,000トークン実測、ヘビー構成での66,000トークン消費報告、ツール選択精度43%→14%の劣化観測、Anthropic code modeの最大98.7%削減レポート、Atlassian mcp-compressor の70-97%圧縮、MCP公式リポジトリ Issue SEP-1576。これらは公開時点のスナップショットであり、実測値はサーバーバージョンや接続構成により継続的に変動します。「40-50%」は典型的なマルチサーバー構成での推計レンジであり、すべての構成に当てはまる絶対値ではありません。「MCPはもう終わり」というSNS上のクレームに対する評価は、2026年5月時点の公開情報(採用事例・SEP進行・圧縮ツール存在)に基づく分析的判断であり、将来の市場動向を保証するものではありません。