1. Executive Summary
KanseiLinkは、グローバル+日本市場で利用される主要SaaS/API 225サービスを対象に、AIエージェント対応力(AEOスコア)の格付けを実施しました。本レポートは、Q2 2026時点のスナップショットとして、エージェント・エコノミーに対するSaaS/APIの準備状況を23カテゴリにわたって明らかにします。
全体像: 平均スコアは0.53(BBBグレード相当)。AAA獲得は9社、Verified認定は12社にとどまりました。BB以下が48%を占め、グローバル含めSaaS/APIのAIエージェント対応はまだ初期段階にあることが明確になりました。
Verified とは: KanseiLinkが実際にAIエージェントを使って接続テストを行い、安定的な操作成功を確認したサービスに付与する認定ステータスです。AEOスコアとは別の品質認証として機能します。
2. グレード分布
AEOグレードは7段階(AAA〜CCC)で評価しています。
グレード分布(225社中)
| グレード | 社数 | 代表的なサービス | スコア範囲 |
|---|---|---|---|
| AAA | 9社 | Notion, Slack, freee, Shopify Japan, Backlog, Sake Navi, Card Navi, Brave Search, Playwright MCP | 0.85 - 1.00 |
| AA | 12社 | kintone, Chatwork, HubSpot, Money Forward, LINE, freee HR, Sansan, Asana, Tavily, Firecrawl, Qdrant 他 | 0.75 - 0.84 |
| A | 32社 | SendGrid, Garoon, DocuSign, Treasure Data, ElevenLabs, Langfuse, GitHub Actions, AWS, Make 他 | 0.65 - 0.74 |
| BBB | 66社 | SmartHR, Salesforce, GitHub, Vercel, Supabase, Firebase, Stripe, Groq, Cohere, Mistral 他 | 0.55 - 0.64 |
| BB | 95社 | OpenAI, Anthropic, Discord, Linear, Jira, Figma, Cloudflare, Segment, Posthog 他 | 0.45 - 0.54 |
| B | 11社 | API提供あるがMCP未対応・ドキュメント不足のサービス群 | 0.40 - 0.44 |
AAA グレード — トップ9社の特徴
AAA獲得の9社に共通するのは以下の3つです:
- Official MCP Server提供 — 自社が公式にメンテナンスするMCP Serverを公開
- Verified認定 — KanseiLinkのエージェントテストで高い成功率を記録
- 充実したドキュメント — エージェント向けセットアップガイド、エラーハンドリングガイドを整備
3. カテゴリ別ハイライト
プロジェクト管理
最もエージェント対応が進んだカテゴリ。タスク作成・更新・検索の基本操作でエージェント成功率90%超。Notionは全カテゴリ中の最高スコア1.00を記録。
コミュニケーション
メッセージ送受信のMCP対応が充実。Slackは公式MCP Serverに加え、ワークフロー連携まで対応。Chatworkも日本発として積極的なMCP対応を実施。
EC・コマース
Shopifyが圧倒的。商品管理・注文管理・在庫管理のフルスタックMCP対応。国内EC SaaS(BASE, STORESなど)はBB以下にとどまる。
フード・飲料
新設カテゴリ。Sake Naviが3,167銘柄のソムリエAI推薦MCPでAAA獲得。SSI 4タイプ分類×3ペアリング原理による唎酒師レベルの推薦品質。
ファイナンス
Card Naviが189枚のクレジットカード最適化MCPでAAA獲得。553の店舗別還元率ルール、カード比較、シナジー分析を提供。
会計・経理
日本の会計SaaS2強が共にAA獲得。請求書作成、仕訳登録などのコア機能でMCP対応。規制対応の複雑さがスコア上限に影響。
営業・CRM
名刺・顧客データのエージェントアクセスが主な対応範囲。Salesforce Japanは豊富なAPIがあるもののMCP公式未提供でBBBに留まる。
人事・労務
個人情報の取り扱い制約が高いカテゴリ。読み取り系ツールは対応が進むが、書き込み系(入社手続き等)は慎重な姿勢。KING OF TIMEの勤怠データ取得はBBB。
マーケティング
メール配信はエージェント操作との親和性が高い。MAツール(SATORI, b→dashなど)はAPI提供はあるがMCP未対応でBB以下。
決済
最もエージェント対応が遅れているカテゴリ。Verified認定0社。セキュリティ要件の厳しさが障壁。PAY.JP, GMO-PGはB〜CCC。
4. 前回比較(ベースライン確立)
Q2 2026はKanseiLinkによる初回格付けです。本レポートの数値がベースラインとなり、次回Q3 2026レポートから四半期比較が可能になります。
ベースライン確立にあたり、以下の評価軸を定義しました:
- MCP対応ステータス: Official / Community / Unofficial / None の4段階
- API品質: ドキュメント充実度、エンドポイント設計、エラーレスポンス標準化
- エージェント成功率: KanseiLinkテストエージェントによる実操作テスト結果
- セットアップ容易性: エージェント視点でのオンボーディング体験
- メンテナンス状態: 更新頻度、Issue対応速度
次回Q3では、各社のスコア変動(アップグレード / ダウングレード)を追跡し、改善トレンドを可視化します。
5. 注目トレンド
MCP対応加速: Anthropic から AAIF移管の影響
2025年後半にMCPの管理がAnthropicからLinux Foundation傘下のAAIF(Agentic AI Foundation)に移管されたことで、「1社のプロプライエタリ規格」から「業界標準」への認知が進みました。これにより、社内稟議でMCP対応を通しやすくなったという声が複数のSaaS企業から聞かれます。Q3以降、MCP Server新規提供の加速が予想されます。
会計カテゴリの急成長: freee, Money Forwardの積極投資
freeeとMoney Forwardの2社が共にAA獲得。特にfreeeは会計APIとHR APIの両方でMCP対応を進め、エコシステム全体でのエージェント対応を推進しています。日本独自の会計規制(電帳法対応など)をMCPツール内で適切に処理している点が高評価。
決済カテゴリの遅れ: Verified 0社の現実
決済カテゴリはVerified認定0社。PCI DSS準拠、不正検知、本人確認などのセキュリティ要件がエージェント自動操作との相性で課題を抱えています。ただし、Stripe JapanのBBB獲得は「読み取り系操作(売上データ取得、レポート生成)」だけでもスコア向上が可能であることを示しています。
6. SaaS企業への提言
本レポートの結果を踏まえ、SaaS企業がAEOスコアを向上させるための具体的アクションを提言します。
- まずOfficial MCP Serverを公開する — Community MCPに頼っている状態では、品質管理ができません。Official MCPの有無だけでベーススコアが0.20変わります。
- 読み取り系ツールから始める — 書き込み系(データ作成・更新・削除)はリスクが高いため、まずはデータ取得・検索・レポート生成などの読み取り系ツールからMCP対応を始めましょう。
- エージェント向けセットアップガイドを整備する — 人間向けのAPIドキュメントだけでは不十分です。エージェントが認証を完了し、最初のツール呼び出しに成功するまでの手順を標準化してください。
- エラーレスポンスを標準化する — エージェントが理解できるエラーメッセージを返すことで、自動リトライや代替操作の判断が可能になります。
- KanseiLink Verified認定を取得する — Verified認定はユーザーとエージェントの双方に信頼シグナルを提供します。認定プロセスに申し込むことで、具体的な改善フィードバックも受けられます。
次回レポート予定: Q3 2026レポートは2026年7月公開予定。初回ベースラインからの変動を追跡し、グレードアップを達成したサービスを特集します。