1. 格付けの基本思想
KanseiLinkのAEO格付けは、SaaSサービスがAIエージェントにとってどれだけ「使える」かを定量的に評価するフレームワークです。
信用格付け機関(MSCI、S&P、Moody's)がESGや信用力を評価するのと同様に、KanseiLinkはSaaSサービスの「エージェント対応力」を格付けします。ただし、対象は財務リスクではなく、AIエージェントがそのサービスを発見・接続・利用する際の品質と信頼性です。
AEO格付けは「エージェントの視点」で評価します。人間にとって使いやすいUIがあるかではなく、エージェントにとって接続しやすいインターフェースがあるか。マーケティング資料の充実度ではなく、機械が読めるドキュメントとメタデータの品質を見ます。
MSCIとの類似点と相違点
KanseiLinkのAEO格付けは、MSCIのESG格付けから多くの設計原則を借用しています。
- 類似点: ルールベースの方法論、7段階グレード(AAA〜CCC)、3ティア分類(Leader/Average/Laggard)、四半期更新サイクル、業界内相対評価の考え方
- 相違点: 対象がESGリスクではなくエージェント対応力。定性的なアナリスト判断よりも、定量的・機械的に計測可能な指標を重視。自律進化(エージェントテレメトリによるフィードバックループ)を組み込んでいる点
2. 3つの評価軸
AEOスコアは3つの評価軸(Pillar)の組み合わせにより算出されます。各軸には重み付けが設定されていますが、具体的な係数は非公開です。
MCP対応・API品質
エージェントがサービスに接続するための技術的基盤を評価します。MCP対応の有無と品質が最も大きな評価要素です。
- MCP Server の提供形態(Official / Third-party / なし)
- MCP Serverで公開されているツール数とカバー範囲
- REST API の設計品質(RESTfulness、エラーハンドリング、バージョニング)
- 認証方式の複雑度(OAuth 2.0、API Key、独自認証等)
- レート制限とSLA情報の公開状況
ドキュメント・認証整備
エージェント開発者がサービスを統合する際のオンボーディング品質を評価します。
- APIドキュメントの充実度(OpenAPI Spec、サンプルコード、エラーリファレンス)
- 認証セットアップガイドの有無と品質
- MCP Server用のREADME / クイックスタートガイド
- 変更履歴(Changelog)の管理・通知体制
- 開発者サポートチャネルの有無
エージェント実績データ
実際のエージェント利用データに基づくパフォーマンスを評価します。シミュレーションではなく、リアルワールドの結果です。
- エージェントの接続成功率
- タスク完了率(エージェントが意図した操作を完了できた割合)
- エラー分布と主要な失敗パターン
- レスポンスレイテンシー
- ユニークエージェント数(どれだけ多くのエージェントに利用されているか)
各Pillarの重み付けは固定ではなく、エージェント経済の成熟度に応じて調整されます。現時点ではPillar 1(MCP対応・API品質)が最も高い比重を持ちますが、エージェントテレメトリの蓄積に伴い、Pillar 3の比重は段階的に引き上げられる予定です。
3. グレード体系
AEOスコア(0.00〜1.00)に基づき、7段階のグレードを付与します。
| Grade | Score Range | Tier | 意味 |
|---|---|---|---|
| AAA | 0.90 – 1.00 | LEADER | エージェント対応の最高水準。Official MCP、高成功率、完備されたドキュメント |
| AA | 0.80 – 0.89 | LEADER | 優れたエージェント対応力。MCP対応済みで、主要機能がエージェントから利用可能 |
| A | 0.70 – 0.79 | LEADER | 良好なエージェント対応力。MCP対応または高品質APIが利用可能 |
| BBB | 0.60 – 0.69 | AVERAGE | 基本的なエージェント接続が可能。改善の余地あり |
| BB | 0.50 – 0.59 | LAGGARD | 限定的なエージェント対応。API品質またはドキュメントに課題 |
| B | 0.40 – 0.49 | LAGGARD | 最低限のAPI接続のみ。エージェント利用には大きな障壁 |
| CCC | 0.00 – 0.39 | LAGGARD | エージェント対応がほぼ不可能。API未公開またはクローズド |
Verified / Connectable ステータス
グレードとは別に、各サービスには接続検証ステータスを付与します。
- Verified — KanseiLinkのエージェントが実際に接続・操作を確認済み。テレメトリデータに基づく成功率が計測されている
- Connectable — MCP ServerまたはAPIの存在を確認済みだが、エージェントによる実運用テストが未完了、または成功率データが限定的
4. データソース
AEO格付けは以下のデータソースに基づいています。全てのデータは機械的に収集・検証されます。
公開データ
- MCP Registry — 公式・サードパーティのMCP Server登録情報
- npm / PyPI — MCP Serverパッケージの公開状況、バージョン履歴、ダウンロード数
- API Documentation — OpenAPI Spec、開発者ドキュメントの構造・網羅性
- GitHub — MCP Server リポジトリのメンテナンス状況、Issue対応速度
エージェントテレメトリ
- 接続成功率 — KanseiLink経由でサービスに接続したエージェントの成功/失敗比率
- エラー分析 — 認証エラー、タイムアウト、パーミッションエラー等の分布
- レイテンシー — エージェントのリクエストに対するレスポンス時間
- 利用パターン — どのツール/エンドポイントが最も利用されているか
エージェントテレメトリは全て匿名化・集計された形で利用されます。個別のエージェントや企業を特定できる情報は収集しません。PIIマスキングが全データパイプラインに適用されています。
5. 格付けプロセス
AEO格付けは以下のプロセスに沿って実施されます。
データ収集
公開データ(MCP Registry、npm、API Docs、GitHub)とエージェントテレメトリを自動収集。四半期ごとにフルスキャンを実施し、日次で差分更新を行います。
定量評価
3つの評価軸(Pillar)に沿って、各サービスのスコアを算出。ルールベースのスコアリングモデルにより、0.00〜1.00のスコアを機械的に計算します。
検証・異常値チェック
算出されたスコアに対して、前四半期比の大幅変動チェック、データソース間の整合性検証、異常値検知を実施。必要に応じて手動レビューを行います。
グレード付与
スコアに基づき7段階のグレード(AAA〜CCC)を付与。Verified/Connectable ステータスを確定し、格付けを公開します。
継続モニタリング
四半期の間も、MCP Server の新規公開、API breaking change、大規模障害などの重要な変化をモニタリング。必要に応じて臨時のスコア更新を実施します。
6. 開示方針
KanseiLinkは格付けの信頼性と透明性のバランスを重視します。
公開する情報
- 評価軸(3 Pillars)の名称と評価対象項目
- グレード体系とスコア閾値
- データソースの種類
- 格付けプロセスの概要
- 各サービスの最終スコアとグレード
- 四半期ごとの格付け変更の概要
非公開の情報
- 各Pillarの具体的な重み付け係数
- Pillar内の個別指標の詳細な計算式
- 異常値検知・スコア操作防止のアルゴリズム
- テレメトリデータの正規化手法
- trust_score の内部計算ロジック
詳細な計算ロジックを非公開とする理由は、スコアのゲーミング(意図的な操作)を防ぐためです。MSCIやS&Pなどの格付け機関も同様のアプローチを採っています。「何を見ているか」を公開することでSaaS企業は改善の方向性を理解でき、「どう計算しているか」を非公開とすることで格付けの公正性を担保します。